2018年2月13日火曜日

発達障害の大変さを説明する

前回から大分時間が空いてしまいましたが、基本的に更新するかどうかは管理人の気まぐれですのでご容赦を。

さて、前回は「できるからといって、健常者と同じようにできているとは限らない」ことを電卓の例で説明しました。
実のところ、この電卓の例は発達障害の大変さをわかりやすく説明する良い例ではないかと我ながら思っていたりします。
というわけで、何がどう良い例なのか発達障害の特徴を挙げつつ説明したいと思います。

ある会社の同じ職場に A さんと B さんの 2 人の社員がいました。
A さんと B さんはそれぞれ電卓を持っていて、A さんの電卓は普通の電卓。B さんの電卓は掛け算のボタンの無い電卓です。
ちなみに、彼らの持っている電卓は持ち主本人にしか見えません
ある日、彼らの上司が A さんと B さんに新しい仕事の指示を出しました。

上司:『10 × 10 の計算をしろ』

A さんは「[1][0][×][1][0][=]」で答えを出しました。
B さんは「[1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][+][1][0][=]」で答えを出しました。
そして、

A さん:『100 です』
B さん:『100 です』

と報告しました。
それを聞いた上司は『2 人とも問題なく同じようにできているな』と判断しました。
次の日、上司は A さんと B さんにまた新しい仕事の指示を出しました。

上司:『100 × 100 の計算をしろ』

A さんは「[1][0][0][×][1][0][0][=]」で答えを出しました。
B さんは「[1][0][0][+][1][0][0][+]・・・(省略)・・・[+][1][0][0][=]」で答えを出しました。
そして、

A さん:『10000 です』
B さん:『い・・・10000 です。(疲労困憊)』

と報告しました。
それを聞いた上司は『2 人とも問題なく同じようにできているな』と判断しました。
次の日、上司は A さんと B さんにまた新しい仕事の指示を出しました。

上司:『今日から毎日、100 × 100 の計算をしろ』

A さんは毎日「[1][0][0][×][1][0][0][=]」で答えを出します。
B さんは毎日「[1][0][0][+][1][0][0][+]・・・(省略)・・・[+][1][0][0][=]」で答えを出します。
そして毎日、

A さん:『10000 です』
B さん:『い・・・10000 です。(疲労困憊)』

と報告し続けました。A さんは涼しい顔で、B さんは疲れた顔で。
B さんはとても疲れていましたが、『疲れているのは A さんも同じ! A さんも同じことができているのだから自分も頑張らなくては!」と思い、毎日頑張りました。
そうです。B さんは自分の電卓に掛け算のボタンが無いことを知りません。A さんの電卓に掛け算のボタンがあることも知りません。いえ、そもそもこの世に掛け算のボタンが存在することすら知りません。
だから、B さんは自分と A さんは同じ条件だと思い込んだまま頑張り続けました。
しかしある日、限界が来ました。B さんが電卓のボタンを押そうとしても指が動いてくれないのです。
B さんは上司に相談しました。

B さん:『すいません。この仕事は大変すぎて私にはもうできません。』

しかし上司は言いました。

上司:『何を言っているんだね。君は A 君と同じようにできてるじゃないか。できないなら仕方が無いけど、A 君と同じように出来ているのにやりたくないというのは怠慢だよ。それは認められない。』

上司はとりあってくれませんでした。
そうです。B さん本人だけでなく上司も B さんの電卓に掛け算のボタンが無いことを知らないのです。
また、B さん自身も自分の電卓に掛け算のボタンが無いことを知らないので、上司に反論することができませんでした。
そして、B さんは『自分は無能な人間なんだ』と思い込み、うつ病になって会社に行けなくなってしまいました。

内容は前回書いたのと全く同じです。それでは発達障害の特徴を挙げていきたいと思います。

(1)障害が他者から見えない

B さんの電卓は周囲の人から見えません。故に、B さんの電卓に掛け算のボタンが無いことも見えません。発達障害は外から見えないのです。

(2)障害があることを自分で気づかない

B さんの電卓には掛け算のボタンが無いわけですが、B さんは他者の電卓を見たことがないので、そのことを B さん自身が知りません。
発達障害は生まれつきの障害なので、発達障害者は健常者というものを経験したことがありませんから、健常者がどういうものかを知ることができない。健常者がどういうものかわからないから、健常者と自分を比較して違いの有無を確認できないということです。
故に、発達障害者は障害があることを自分で気づかないのです。

(3)障害の具体的症状が自分でわからない

B さんは A さんの電卓を見られないので、自分の電卓に掛け算のボタンが無いことを知ることができません。ましてや、この世に掛け算のボタンが存在することすら知りません。
発達障害者は漠然とした生き辛さを感じてはいるものの、それが具体的に障害のどういう症状が原因なのか自分でわからないのです。

(4)障害の具体的症状を相手にうまく説明できない

B さん自身が自分の電卓に掛け算のボタンが無いことを知ることができないわけですから、掛け算のボタンが無いことを上司に説明できません。
発達障害者は自身の障害の具体的症状を相手にうまく説明できないのです。

(5)どういう配慮をしてもらえば良いかわからない

もしも B さんが A さんの電卓を見ることができたら、B さんは「掛け算のボタンが無いから、それを使わない仕事にしてください」と上司に言うことができて問題は解決できました。しかし、実際には B さんは A さんの電卓を見ることができないのでそれはとても困難なことです。
発達障害者は障害の具体的症状が自分でわからないが故に、どういう配慮をしてもらえば良いかわからないのです。

以上です。いかがでしょうか。発達障害の何が大変かおわかりいただけましたでしょうか。
私自身、発達障害の大変さを健常者に理解してもらおうと今まで色々試してきましたが、この電卓の例を出すのが一番効果的でした。病院のデイケアの精神保健福祉士さんからも「わかりやすい」と言われました。

ちなみに、ここまで読んだ人の大半は「じゃあ、どうすれば良いの?」と思うことでしょう。私自身もそう思います。
ぶっちゃけ、一発解決する方法は現在のところありません。日常生活や仕事中で、おかしなところを周囲の人に指摘してもらったり、発達障害者どうしで情報交換したりしながら試行錯誤していくしかないのが現状です。
ただ、おかしなところを周囲の人に指摘してもらったりするにも周囲の理解が必要ですが、世間一般の理解はほとんど無いに等しいです。
上記の電卓の例はそんな周囲の理解を少しでも得られるようにするために私自身が考え出しました。
この電卓の例が少しでも読者さんのお役に立てれば幸いです。

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