発達障害で当事者が困ることの最たるものは「障害が目に見えない」ことだと思います。
こう書くと、「確かに見た目で健常者と区別がつかないから大変だよねー」と思われるでしょう。しかし、実のところその認識では不足で、実際はもっと深刻な問題だったりします。
何がどう深刻なのかと言いますと、発達障害の本人からも自分の障害が見えないんです。
(1)気がつかない、発見が遅れる
世の中の発達障害の人の多くは自身の障害を自覚する前は、社会生活の中において「自分はちょっと変わってる?」という漠然とした感覚を持って生きていますが、自分が障害者であるとはなかなか気がつきません。
発達障害であるが故の苦労も当然している訳ですが、「これは自分以外のみんなも普通にしている苦労だろう」と思っていて、まさか自分が発達障害であるなどとは思いもしません。
何故そう思ってしまうか。それは、「障害が目に見えない」からと、「健常者がどうしているか知らない」からです。
自身の障害が自分の目で見えていれば、ぱっと見てわかりますし、健常者がどうしているかを知っていればそれと自身を比べて自分だけが苦労をしていることに気がつくことが出来ます。
しかし実際は、発達障害は目に見えませんし、健常者の生活を体験することもできないため、生きづらいまま生きていきます。
そのまま頑張ってなんとか人生を全うする人もいますが多くの発達障害者は途中でどうにもならなくなり、その中でたまたま発達障害という障害を知って「もしかして自分はこれなのでは?」と思った人が病院の門を叩きます。
(2)障害の具体的な症状がわからない
自身が発達障害だと気づき、病院へ行って診断が下されても苦労は続きます。
「あなたは発達障害です」と診断されても、具体的な症状が自分でわからないのです。
何故か。それはやはり「障害が目に見えない」からと「健常者がどういうものか知らない」からです。
こう言うと発達障害以外の方は『具体的な症状なんての診断すればわかるでしょ。診断した医者に聞けば解決!』と思うかもしれません。しかし、現実は厳しいのです。
まず、ネットなどで発達障害の症状を調べると、大変多くの症状の例が出て来ます。しかし発達障害だからと言って、それら全てが一人に当てはまる訳ではありません。
それらのいくつかだけが当てはまったり、症例に無い症状があったりします。例えば発達障害が百人いたとしたら全く症状が同じ人は一人もいないのが普通です。
そして、発達障害とわかっても、医者からは「自閉の傾向がある。コミュニケーション障害もある」という程度しか教えられず、具体的な細かい症状は不明なのです。
例えば、一言で「コミュニケーション障害」と言っても、皮肉や社交辞令が通じない、空気を読むのが苦手、音声による意思疎通が苦手など、色々なパターンがあります。
ある「コミュニケーション障害」のある発達障害の方で、健常者の方と会話すると何故か相手が突然怒り出すことがあるというケースがあったとします。医者はこのような「これまでの事実」をもとに診断しますが、この場合、皮肉や社交辞令を理解出来ないからなのか、空気を読めないためなのか、音声による意思疎通が苦手だからなのかなどの根本的な原因、つまり具体的症状まで踏み込んで診断しません。故に、医者に聞いても具体的な症状までわかるのは極まれです。
さて、そうなると障害の具体的な症状は自分で探るしかありません。しかしそれを拒むのは先に述べた「障害が目に見えない」と「健常者がどういうものか知らない」の 2 つです。
「障害の具体的な症状」というのは、言い換えると「健常者とは異なっている部分」です。これを認識するためには自身の頭の中と健常者の頭の中を比較することが必要です。
しかし、人間の頭の中は目に見えません。無論、物理的に解剖しても無駄です。この場合の“頭の中”とは、頭の中でどのように情報を処理しているかだからです。また、発達障害者本人が一度健常者を体験してみれば「健常者とは異なっている部分」が丸わかりですが、この方法も現代の科学ではまだ不可能です。
とにもかくにも、発達障害者は自身の障害の具体的な症状が正確にわからないのです。
さて、この“具体的な症状がわからない”ということは、健常者に対して“具体的な症状を説明できない”ということでもあり、また“具体的な対処法もわからない”ということでもあります。
身体障害なら「目が見えない」、「耳が聞こえない」、「歩けない」など。知的障害なら「IQ が○○以下」など、当事者も健常者も症状を把握しやすいですが、発達障害はそれがとても困難なところが身体障害や知的障害などの他の障害との大きな違いと言えます。
そして、発達障害者が社会生活を送るには健常者の方々にある程度の配慮をしてもらう必要があるわけですが、そのために健常者の方に「~~の症状があるが、○○なことに気をつけていただければ大丈夫です」と伝えたくても具体的な症状・対処法を説明することが難しく、当事者も周囲の人も双方が頭を抱える事態になります。
先の「コミュニケーション障害」の例の場合、皮肉や社交辞令を理解出来ないのならそれを前もって伝えておくことでトラブルを回避出来ます。ですが、発達障害の場合それがとても難しいのです。
とは言え、「こうすれば自身の具体的な症状がわかる!」という画期的な方法も無く、ほとんどの発達障害者の最大の悩みとなっています。
ちなみに私個人としては、ネットで症例を見て回って自分に当てはまるかを考えたり、発達障害の当事者会の茶話会に出て他の当事者の方の話を聞くなどして、日々自分研究の日々です。恐らくこの作業は一生続くのだろうなと思っています。
一度でも良いので健常者といものを体験できれば、自身と健常者の違いがわかって一発解決なのですが・・・。
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