(1)発達障害に対する理解とは?
発達障害関係の新聞記事・ネット記事・ブログなどを見ますと、
- 「発達障害に対する理解がない」
- 「発達障害に対する理解がまだ進んでいない」
- 「発達障害に対する無理解が・・・」
というような言葉を多く見かけます。
結構な頻度で見かける・使われる表現なのですが、さて、『発達障害を理解する』とは具体的にどういうことなのでしょうか。
あるいは、『発達障害を理解した状態』とは具体的にどういう状態なのでしょうか。
発達障害のすべての症状を丸暗記したらでしょうか。
発達障害者すべてに対処できるほど膨大な対処例を記憶していることでしょうか。
もしそうなら、この世に発達障害を理解している人は一人もいないことになります。なぜなら、当事者である我々ですら発達障害についてよくわかっていないのですから。
(2)発達障害に対する理解は本当に必要か?
発達障害を完全に理解している人が一人もいないということは、発達障害者と健常者は仲良くすることができないということでしょうか。
答えは否です。
発達障害者と仲良くしている健常者は、現実社会にたくさんいます。しかし、彼らが発達障害に対する理解度が高かったり、知識が豊富かというと必ずしもそうではありません。中には理解度も知識も皆無の人もいます。
このことからも、発達障害者と健常者が仲良くするのに理解や知識が必ずしも必要ではないということがわかります。
(3)発達障害者が本当に必要だったもの
発達障害者と健常者が仲良くするのに必要なものが理解や知識ではないとしたら、本当に必要なものは何でしょうか。あるいは、発達障害者と仲良くできる健常者とそうでない健常者の本当の違いは何でしょうか。
私の経験や他の発達障害者の方々の話から、「発達障害に無理解な人」と呼ばれる人たちには共通した特徴があることがわかります。
- 「人の話を最後まで聞かない」
- 「言ったことを否定してくる」
- 「考えを押しつけてくる」
どうやら、「発達障害者本人を理解しようとしない人」が無理解な人と呼ばれている傾向があるようです。つまり、「発達障害」の知識や理解度は判断基準に入っていないようです。
しかし逆を言えば「発達障害者本人を理解しようとする人」が理解ある健常者と呼ばれているわけですから、この「理解しようとする」という姿勢を発達障害者側へ伝えられれば誰でも理解ある健常者の仲間入りができることになります。ようはコミュニケーション方法を改善すれば良いわけです。
(4)発達障害者とのコミュニケーション方法
では具体的にどうすれば良いかをご説明します。
【その1】話を最後まで聞く
相手が話している途中では決して割り込まず、ツッコミを入れたくても反論をしたくてもグッと堪えて話し終わるのを待ってあげてください。
発達障害者の中には話すのがゆっくりだったり、同じことを複数回言う人もいますが、黙って最後まで話を聞いてください。
相手の話を遮って話してしまうと、相手から「この人は私の話を聞いてくれない」という印象を持たれます。それが反論だった場合はその印象がさらに強くなります。
「人の話は最後まで聞く」。
まずは、相手の考え・言いたいことをできるだけ正確に「把握」することを心がけてください。
【その2】わからないことは質問する
相手の言ったことでわからないこと、疑問に思ったことは必ず聞いてください。腫れ物に触れるかのように疑問に思ったことを質問しないのは誤った配慮です。
ただ、気をつけてほしいことが一つあります。それは、この段階でする質問はあくまで相手の考え・言いたいことを把握するためのものだということです。
相手の言っていることが間違っていたり、自分の考えと違っていても、否定したり反論したりせずに一旦置いておいてください。
まずは、相手の考え・言いたいことを漏れなく正確に「把握」することが先決です。
【その3】把握した内容を確認する
相手の話を最後まで聞き、疑問点を質問して、相手の考え・言いたいことを漏れなく正確に把握できたと思えたら、自分が把握した内容を相手に話して間違いや食い違いがないか確認してください。
そして、間違いや食い違いがあった場合はさらに質問をしてそれを無くしてください。
なお、ここで注意するのは、質問するのはあくまでも「把握」のためであって、「理解」のためではないということです。
相手が言っていることが間違っていると思ったとしても、まずはその間違った考えの全体像を正確に「把握」することに努めてください。
【その4】自分を主語にして話す
相手の考え・言いたいことを漏れなく正確に把握することができたら、いよいよこちらから発言する番です。
この時気をつけことの 1 つ目は、「自分を主語にして話す」ことです。
「自分を主語にして話す」というのは、「一般的には・・・」とか「普通は・・・」というような話し方ではなく、「私は~~だと思う・考える・判断する」という言い方をします。
これはつまり、自分の考えと相手の考えが異なっていても相手の発言を否定しないということです。
たとえ相手が間違っていると思っても、「私はあなたの言っていることに反対だけど否定はしない」ということを意識して心がけてください。
「否定しない=賛成」ではないのです。
また、相手の発言を否定すると、相手から「この人は私を理解してくれない」という印象を持たれます。
相手の言っていることが間違いで、自分の方が正しい時は、つい相手を否定して反論しがちです。そしてそれは、相手が自分の間違えを認めて考えを改めるという効果を期待して行われていることと思います。
しかし、相手を否定して反論すると、相手は「この人は自分とは相容れない人間だ」と思って、話を聞いてくれなくなります。考えを改める効果なんて全く望めません。
人間関係が悪くなるだけで、百害あって一利なしなのです。
【その5】相手に考えさせる
では、相手の考えや発言に間違いがある場合はどうすれば良いのでしょうか。それは、「相手に考えさせる」のです。
例えば、「あなたのやり方では~~な場合に○○な問題が起きますが、その場合はどうしたら良いと思いますか?」です。
「どうしたら良いと思う?」と問いかけて相手に考えさせ、あくまで自分から間違いに気づかせるのです。
ただし、相手が間違いに気づいたからと言って、「それみたことか。だからこうしろ!」と自分の考えを押しつけてはいけません。
「こうしたらどうだろうか」と「提案」をし、それを「相手に考えさせる」のです。
相手は考えた結果、あなたの提案を受け入れる場合もありますし、質問が返ってきたり、逆に未知の問題点を指摘してくれる場合もあります。
何にせよ、相手の話を最後まで聞いてあげてください。つまり、【その1】に戻ります。
その後は【その1】から【その5】を繰り返すだけです。
【その6】諦める
世の中には、考えない人、考えるのが苦手な人、考えることができない人がいます。
感情論で動いていて、全く考えない人。
知能が低くて、考えるの苦手な人
支離滅裂で、論理的に考えることができない人。
また、そもそも人の話を聞かない人、人の話を理解できない人というのもいます。そして、そのような人たちには前述の【その1】から【その5】を実践してもうまくいきません。それは、発達障害か否かは全く関係ありません。健常者の中にもいますよね、言葉は通じているのに話が通じない人。そのような人たち相手にはどんなに頑張っても無駄です。諦めるしかありません。
もちろん、相手の発言を否定したり、考えを押しつけるやり方も、このような人たち相手には無意味です。
(5)まとめ
発達障害者に対する配慮に必要なのは理解ではなく、コミュニケーション方法の改善なのではないか。
という話だったわけですが、ぶっちゃけここに書いたコミュニケーション方法は健常者相手にも有効です。というよりも、コミュニケーションの基礎とされていることと、ほとんどやってることは同じです。
でもこの基礎ができていない人がとても多いです。人の話を最後まで聞かないで発言し出す人とかほんと多いです。
昨今、発達障害がメディアで紹介されることも多くなり、発達障害への理解の必要性が叫ばれておりますが、本当に必要なのは国民のコミュニケーション基礎教育なのかもしれません。